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「そんなことぐらいでわめくな!心霊番組なんて子供だましだ!!」
「そんなことじゃないわ」
突然、後ろから割り込んできたのは夏鈴だ。
「年に一~二回しかやってない番組だもの。お祭りなのよ。わかってないわね」
夏鈴が俺に冷たい。
――――――ショック。
「あとでyoutubeで探せばきっと観れるわよ。元気を出して」
夏鈴は優しく子供たちに励ますように声を掛け、
テーブルに着席させた。
食事が始まっても、俺は何か納得いかない気分で飯が味わえない。
夏鈴は丸く切ったキュウリの手揉みサラダを俺の口元に運んで「あ~ん」と機嫌を取ってきた。
「……ほらぁ、そんなにしょげないで?
さっきはきつい言い方になっちゃって、ごめんね」
夏鈴は少しだけオロオロとしていた。
そんな姿勢に感動して、俺は口を開けて夏鈴にご飯を食べさせてもらう小さな子供みたいに甘えた。
それを見ていた双子達が「パパ、あの番組を一番楽しみにしているのが誰か知らないの?」と聞いてきた。
そんなの、わかってるさ。
「……お前らだろ?」
「ちがーう」「わかってない」「何年一緒に居るんだよ?」
高校三年になった二人に交互に突っ込まれ。
俺は、夏鈴を見た。
夏鈴は笑っていた。
「ほら、番組が観たいなら早く食べちゃいましょう」と促され。
食事後、子供らは相変わらずテレビ前に居座って盛り上がる中、風呂に入ろうとした俺をおいかけて夏鈴が脱衣所に入ってきた。
「一緒に入っても良い?」
「もちろん」
湯船に浸かりながら、俺の膝の上に座る夏鈴が頭の上に髪を結い上げて結ぶ。
細いうなじが色っぽくて吸い付くと、夏鈴は俺の首に腕を回してきて口付けた。
「え?どうした?もうスイッチ入ってる?」
「……うん」
単純な構造の俺の体も臨戦態勢に入る。
対面座位で自分から重ねてきた妻の体を両手で支えながら、上と下で繋がる快感に脳が溶けていく。
夏鈴は珍しいぐらい自分から動いていた。
声を抑えながら高ぶっていく夏鈴に興奮する俺はもっと高ぶって、固く太く強く激しく風呂場の壁に凭れた夏鈴を抱き寄せて愛すると、全体の肌の感触も良い具合に柔らかく解けて、さらに抱きしめていたくなる。
今夜は寝れそうにないぞ、と思ったその時。
曇りガラスの外側に人が立っているのを鏡越しに見てしまった。
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