他愛無い日々 31

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ピタッと動きを止めた俺を不思議に思ったように、夏鈴が「どうしたの?」と聞いてくる。 「い、いま。そこに誰かが」 そう言っている間も、その人影はドアの向こう側に居た。 夏鈴が見ても「誰もいないわよ」という。 おかっぱ頭の小学生ぐらいの女の子だ。 ガラス越しとはいえ、花柄の着物らしき服装で、微動だにしない。 「……いる。いるよ、絶対にいる」 気付くと俺は萎えていた。 夏鈴はドアに近付いて、開けた。 開けた瞬間、夏鈴の裸越しに一瞬だけはっきりと少女の顔が見えた、気がした。 だけど、すぐに跡形もなく消えて無人の脱衣所になっている。 「……う、うお……同じだ。あの時と!!」 俺は怖くなって湯船に飛び込んで寒気を吹き飛ばそうとして蹲った。 夏鈴はなぜかバスタオルを体に巻きつけて、風呂場から出ていく。 「待って。どこ行くの?俺を一人にするの?」 情けない声で引き留めても、夏鈴は一度も振り向かずに脱衣所からも出て行ってしまった。 湯船に顔半分まで埋まっていると、すぐ背後でふぅとため息が聞こえる。 気のせいだと自分に言い聞かせても、またすぐに「はぁー」とため息が聞こえた……。 ぴちょん。 静寂の中で水が落ちる音が響く。 湯船の中にいても寒気が止まらない。 「か、かり~~~ん」 情けない声で呼ぼうとしても、体に力が入らない。 そしてまた。 「ふぅ~~~、はぁ~~~」とすぐ後ろから吐息が触れた。 絶対に誰かいる!! 俺の背後に、しかもよし掛かったバスタブと壁の間に人が入る余地なんてないのに!! ふっ 「!!!」 照明が消えた途端、俺は飛び上がるように湯船から出て濡れた体のままリビングに走った。 ドアを開けた瞬間、視界の端っこに風呂場が見えてそこに着物姿の女の子が立っていた。 「!!!!」 悲鳴にならない声をあげながら、全裸でリビングに逃げる。 すると、家族みんなどこにもいない!! テレビは心霊番組が流れている。 「夏鈴?!!」 返事がない。 「燿馬?!! 恵鈴??」 必死に呼ぶと、笑いをこらえていたのを噴き出すようにして三人ともキッチンから顔を出した。 大笑いしている!! 「で、出たんだよ!!」
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