635人が本棚に入れています
本棚に追加
必死に訴えていると、夏鈴がバスタオルで俺の前を隠してくれて、滴る水を別のタオルで拭きながら言った。
「落ち着いて。どっきり大成功よ」
―――なんだって??
驚いて固まっていると、
「もう、パパったら幽霊が怖いんじゃないの」
「さすがに本物が目の前に出てきたら、誰だってこうなるよ」
双子が俺の取り乱し振りをつるし上げた。
情けないが、今更隠しようもない事実に俺は苦笑いするしかない。
「……ところで、どっきりならさっきの女の子は?」
どこのどなたさまだろうと思って夏鈴に聞くと。
「あれは本物なのよ」と。
――――え??
「悪戯好きの女の子の霊にお願いしたの」
「なんで?」
「だって、晴馬ったら心霊番組を子供だましだって言ったから」
「……そんなこと!!」
「言ってたじゃん」
「言ってたよ、さっき」
三人の目が、俺のかよわいハートに鋭く突き刺さった。
――――なんてやつらだ……
「あ。パパ、廃人みたい」
「ちょっときつ過ぎたんじゃない?お灸」
「晴馬?ごめんね? しっかりして、ほら」
――――もう駄目だ。
完全に俺のキャパを超えている……。
本物の幽霊を使って、ドッキリをしかける家族。
その事実を受け入れるには、今の俺には地球一周マラソンをするよりも難しい……。
「あ!!晴馬!!」
目が覚めると、俺はベッドで全裸で寝ていた。
真夜中の途中で、隣で寝息を立てている夏鈴の寝顔を見て、急に復讐心が込み上げてくる。
眠る夏鈴を起こす方法ならいくらでもある。
俺はごめんなさいと懇願する夏鈴を想像して、パジャマを脱がせていく。
感じやすい場所に愛情に怒りを混ぜて捏ねるように愛撫をした。
じっとりと汗ばむ体が反応しはじめ、
重なって熱く絡みつく粘膜の音が微かに変化して、
その時を待ち焦がれながら腰を振ると
ふぅ~、とまた。
誰かに息を吹きかけられて俺は止まった。
「フフフ」
笑い声に凍り付いていると、
いつの間にか目を覚ましていた夏鈴が起き上がって抱き着いてきた。
「晴馬、やり過ぎちゃってごめんね。怖かった?」
「……怖いなんてもんじゃない」
「もう大丈夫よ。私が守ってあげる」
……色んなフラストレーションが爆発して
俺達は力尽きるまで愛し合った。
end
最初のコメントを投稿しよう!