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他愛無い日々 33
果てしなく暗い海を漂っているような気分で目が覚めた。
周りを見ても誰もいない。
シーツに手を伸ばしても居るはずのあなたが居ない。
―――いない。
そう思ったら、飛び起きていた。
カーテンの隙間から真っ白い光が差し込んでいて、
どこかしらか鳥のさえずりまで聞こえている。
ふわりと風が吹いて、
振り向くとあなたが居た。
「え??泣いてるの?」
あなたは優しく、頬を濡らす涙を指先で掬ってくれる。
堪らず両手を広げて、思い切り掴むとそのまま力いっぱい抱き寄せてベッドに引き摺り込んだ。
あなたは笑っていた。
だから、私も笑った。
白いタオルケットの下で互いの首に手をかけて引き寄せていく。
近付く吐息が触れ合うと、待ち遠しくて唇を開いた。
柔らかな感触と共にひんやりと冷たい塊が口に押し込まれ、
それが氷だと解った途端にまた
あなたは私の舌からそれを奪い取ろうとして
激しく絡みついた。
首には太くて逞しい腕が回りこんで逃げることができない。
されるがままに激しいキスを受け止めながら、
私はあなたの背中に手を這わせた。
目を閉じると、あの冷たくて果てしない闇にひとりきりになる。
こうして求め合っていても、強い力で私は闇の世界に引き戻されそうになる。
だから掴まえて。
私を諦めないで。
あなたがいなくちゃ、戻って来れない気がするの。
なにがあっても私を諦めないで欲しいの―――
晴馬が私の涙まで舌で舐めとると、
まるで本当のオオカミに愛されているような気分になる。
「良い匂いだ。お前の匂い、すっげぇ好き……」
甘いささきに目を開けると、
すぐそこにあなたがいた。
「私も、好きだよ」
「夏鈴、愛してる」
掌を重ね合わせながらまた
眩い朝日に背を向けて
私達は愛し合う。
何度生まれ変わっても、あなたと二人でこうしていたいな……
BY 夏鈴
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