幽霊が家に住み着いたんです。実家の台所に

4/8
前へ
/8ページ
次へ
 たしか、百万円ぐらい積んだと聞く。商売をやっていたとはいえ父にとっては痛い出費だったろう。  ところが、やってくる霊媒師、祈祷家、その誰もが憔悴しきった表情で匙をなげるのである。 「ダメだ。この家に住む霊は強力すぎて、手におえない。というか、この家は霊の街道になっている。ここを宿場町にして、つぎからつぎへと死人が群がってくる。このままでは将来、大変なことになる」  と言って、母親に信仰のリストラを勧めた。  彼女もあまりに周囲がうるさいので祭壇を整理してみたものの、心の空虚さを埋めるためにやっているので焼け石に水である。  そして、その子供。すなわち、わたしが見事に霊視能力を受け継いだという次第である。  白い人影が一瞬よぎったり、紫色の不定形生物が飛んでいたり、タンスの陰に複眼が浮かんでいたり、黒い子供のようなもの、胎児が三つぐらい合体したもの、他人のスカートを覗こうと歩調を進めるたびにアスファルトに浮かぶ骸骨。まぁ、当時の女子はブルマを履いてしっかりガードしていたのであるが。  ともかく色々な物が見える。  だいたい、それが人であるか天然由来の自然霊であるか、判別はつくようになった。  前者は人間特有の強欲というか、そういう煤けた影を必ず背負っている。どれだけ聖人君子であろうともだ。     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加