幽霊が家に住み着いたんです。実家の台所に

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 それらは害悪であるばかりでなく、それなりに役立った。高校時代に西洋占星術が流行ったのである。クラスの女子を相手にわたしは霊感を揮った。  見えてくるのである。ホロスコープを凝視する依頼人の背後に不気味な人外が。  そんな具合で自分の霊感とは適切な距離を置けるようになった。  で、今までみた零体のなかで極め付けが「彼女」である。  震災前年の猛暑日。玄関を開けると10メートルほど先の台所に彼女が突っ立っていた。  最初は変な客だなと思いつつも「こんにちわー」をあいさつした。  だが。  返事がない。  ゆらぁ?っと彼女は漂っているだけである。  足が地面についていない。 「あっ、これはアカンやつや」  わたしはとっさに身構えた。白いやからは黒い奴に比べて霊の中でもとりわけエネルギーが高く、うかつにコミュニケートすると危険だ。  しかし、彼女は黙ってふわ?っと浮かんでいるだけである。  まるで化けの皮のように、まったりと佇み、まるで存在感がない。漂白された邪気とでも言おうか。  ただ、彼女は冷蔵庫のド真ん前に立っているだけである。  語り掛けても呼びかけても反応がない。もちろん、これはやってはいけないことである。浮遊霊が見えても決して交信してはいけない。最悪、取り殺されるばかりでなく、知人に被害が拡散する。     
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