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その間も青い鳥は母の肩にじっと乗っていた。
玄関をそっと閉め、なるべく体が動かないように靴を脱ぎ、母は台所のテーブルに着く。
まだ鳥は乗っている。はははと母が笑う。僕も笑う。
声に驚いたのか鳥が飛ぶ。羽ばたいてテーブルに降りる。
「可愛い」
「ほんと、可愛いね。人に慣れてる」
僕は言い、パンをテーブルにおいた。
鳥はチクチクと、パンの端をついばむ。
「小さくちぎった方が良いんじゃない?」
母に言われて僕は鳥がついばんでいるパンに手を伸ばす。鳥がビクッと跳ねる。「ごめんごめん」言いながらパンをちぎり、小さく指でつまんでポロポロとテーブルに落とした。「食べてるね」母が言う。
「お腹空いてたんだね」
「水飲むかな?」
「うん、喉つまりそうだもんね」
僕は食器棚からコップを出す。
「お皿の方が良いんじゃない?深くて飲めない」母が言い、ああそっかとコップを小さめの浅い皿に持ち変える。
水を入れ、皿をテーブルに置く。
パンをしばらくついばんでいたけれど、水は飲まない。
「いらないのかな?水」
「そうね、今はそういう気分じゃないんじゃない?」
「気分って」僕は笑う。
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