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団地の人が飼っている鳥じゃないかという話になり、僕は裏が白いチラシを探し、『鳥を保護しています。頭が白く黄色いくちばし、胴体は青くて頬に黒いぶち、羽と尾の先が黒です』と書いた。
部屋の号数と名前も書き、さっき鳥が止まっていた木にガムテープで貼り付けた。
家に戻ると母はテーブルに着いたままで、鳥は母の両手のなかに包まれていた。
白いまぶたが下から目を包む。鳥はうっとりと安心したような顔をする。
「あったかい。ねぇ、ちょっと撫でてごらん。さらさらして気持ちいい」
そっとよ、と念を押され僕は指先で鳥の背中を撫でた。羽の手触りは気持ち良かった。
「ピーちゃん」母は優しく鳥に呼び掛ける。
「なんか箱ないの?」僕は言う。
少し考えてから母がケージがある、と言う。
僕がまだ小学生の頃犬が欲しいとねだり、団地では飼えないからと代わりに飼ってくれたハムスターが亡くなって何年も経つのに、ケージがまだ家にあると言うのだ。
僕は呆れた。母は捨てられない人なのだ。いつもはそれで揉めるけど、今回は母の捨てられなさが項を奏した。
言われた通り押し入れの天袋を開くとごみ袋に包まれた透明のプラスチック製ケージがあった。
それをおろし、母の指示通り全体をタオルで拭き、新聞をちぎって下に敷き詰めた。
エサ用の小さな陶器も出てきて、「良いのあるじゃん」と僕はそれに水を入れケージのなかに入れた。
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