生誕

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 かの地で眠りから醒めた後、つとむくんはしばらくして、この恐ろしき闇の洞窟の不気味さから、居ても立ってもおられず、ひたすら歩き回り始めたのであったが、しかししばらくしてすぐに、まるでモーターの轟音のような怒号に満ちた凶暴なる吼え声を浴びせかけられたかと思うと、すぐに右腕を食いちぎられているような強烈な激痛を感じた。    そのすざまじい轟音と、あまりの激痛と、甚大なる恐怖に苛まれながらも、つとむくんは漆黒の闇で全く視界を遮られているので、何も見ることは出来なかった。    しばらくして、凶暴なる怒号に満ちた轟音はやみ、今度は辺り一面に冷厳なほどの静寂が訪れたが、しかしつとむくんの右腕には耐え難い激痛だけが残った。    たった今しがたまで、その癒し難い激痛はつとむくんを苛み続けたのだが、しかしそれが少しだけ和らいでくれた事には理由があった。    つとむくんは右腕を失っていた。  つとむくんはそのまま闇の中を進み歩いた。    頑強な岩の地肌を見る事は出来なかったが、しかしその厳然たるいかめしさは、視界に入らずとも十分感知する事が出来た。    つとむくんは、永遠に続く死の暗黒のような暗闇の中で、さまざまな回想に想いを巡らせた。    自身の抑えがたい欲望のためだけに殺した女子のこと。    つとむくんの住居の近隣に住んでいた夫婦が飼っていた、飼い犬を解剖した思い出。    食肉店で殺してしまった温厚な肉屋夫婦のこと。       
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