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今だ、つとむくんの住居の一室で横たわっている、小さな蟲どもに寄り付かれた、朽ち果てたように枯れきった女子の屍を眺めながら、コーヒー牛乳を飲んだ思い出・・・・・。
それらの思い出の最中、絶えず耳元に聞こえてきた、あの「殺せ 殺せ」の囁き声。
こうした自身の普段の日常生活を想起し、回想し続ける事でしか、つとむくんは、この暗黒一色の世界で、正常さを保ってなどいられないと考えていた。
いったい、どのくらいこの冥界のような漆黒に包まれているのか、もう把握出来ないほど、もはやつとむくんに時間認識の感覚は消滅していた。
静寂はますます冷厳さを増して、まるで不愉快極まりない無音のノイズのように、つとむくんの脳を容赦なく破壊し、打ちのめし、射抜いていく。
そしてつとむくんは、名状し難い何者かに食いちぎられた右腕の肩越し辺りから、自身の皮膚全体に綻びの亀裂が走り抜けていることもすでに知っていた。
もはや使い物になりそうもない皮膚・・・・・。
つとむくんは闇の中で一旦立ち止まった。
そしておもむろに、右肩の綻びた皮膚の一端をゴムのようにひっぱったかと思うと、一気に全身に走る亀裂の痕に沿ってそのまま皮膚全体を引き剥がし始めた。
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