生誕

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生誕

確かにその洞窟は、辺り一帯頑強な巌に取り囲まれ、その上漆黒の闇が視界を覆っているので、ここでは何も見ることが出来なかった。    つとむくんは何故自分がこの地にいるのか、まるで理解出来なかったが、意識が戻り、気がついた時には、この暗闇の洞窟の中で眠っていたのであった。    記憶にあるのは、気ままな一人旅に出て、その道すがらに訪れた水辺で見つけた、緑色の体毛に覆われた緑猿に好奇をおぼえ、言葉では言うに憚る行いをした後、河原を歩いていたところまでで、それ以降の記憶がまるで消えていたのであった。    ここでなすべく事はもはや、この名状し難い暗黒の闇の中を、出口を求めて這い回る事だけであった。   だが長い時間、すでに歩き回っているのであるが、ただひたすら漆黒の闇が続くばかりで、気も遠くなるような絶望がつとむくんを蝕んでいく。    ただ、ずっと感じていたはずの右腕の痛みが、少しだけ治まってくれたことが、唯一の救いと言えばそうであろうか。       
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