嫌いなままでいい

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 過去の話をしよう。  今の同居人と一緒に住む前、俺が一人で暮らしてた頃、……よりもさらに前。  俺は雪の多い地域に住んでいた。  その頃の俺は、ある女性と暮らしていて。まあ、なんだ、その恋人……的な?  彼女は体が弱くて、よく寝込んでいた。特に冬は。  寒い地方に生まれたくせに寒さに弱いってなんだよとか、寒い地方に生まれたんだからそこらへんは慣れろよ、とか思わなくもなかったけど。  雪が降ると、やっぱり彼女は寝込んで。熱をだして。  いつも、不安だった。彼女が寝込むと。  ちゃんと治るだろうか、元気になるだろうか、って。  だから、雪は嫌いだった。  ……あいつは、好きだったけど。    彼女と別れて、別々に暮らして、……彼女が亡くなって。やっぱり俺は雪が嫌いだった。  嫌なことばかり思い出すから。  寝込んでいる彼女を見て不安に思ったこととか。  別れ際の彼女の傷ついたような顔とか。  幸せだった彼女との思い出すらも、俺を責め立てている気がして。  謝りたいことがたくさんあったのに、もう謝れないことを思い出させて。  だから雪は嫌いだ。
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