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起
その夜、僕のアパート自室はファッションショーの会場さながらになっていた。
ありったけの服をクローゼットから引っ張り出し、着替えに着替えて、次々と、とにかくコーディネートを試していく。
モデルは僕。
どうにか僕のブサ顔があっさり塩顔になるコーデはないものかと、とにかく検証に検証を重ねている。
そう。今日は特別な日だ。
ん?
いや、間違った。
特別な日は明日でした。
とにかく、そんな基本的なことも間違ってしまうくらいに、僕は焦り、煩悶していたのである。
しょうがないじゃん。
彼女いない歴=年齢のまま大学生にまでなった僕が片思いしている研究室の後輩(本田さん)とデートをする日、それが明日なんだから。
それは言うまでもなく、生まれて初めてのデートなのだ。
これを焦らずして何が漢か。
イケメンには解るまいこの気持ちを咀嚼せずして、何がブサ男か。
と、まぁ、そんな具合で下準備が止まらなかったのである。
さて、着替えを繰り返すこと2時間強。
鏡の前にはちょっと諦めてきた僕がいた。
明日、本田さんがメガネ(注:彼女は普段メガネを掛けています)を忘れてくれたらいけそうだが、中々難しい。
表情を凛々しく変えてみたらただの変顔になった。
フード付きを選んでフードを深く被ったら犯罪者になった。
どうしよう。
膝が折れた。
一応最後の足掻きで笑顔を作ってみた。そしたら、前歯が汚いことに気づいてしまった。くっきりと青ノリがピロピロくっついている。
どうしよう。
心が折れた。
僕は崩れ落ちた。
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