私を、離さないで

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 暗い車内で、運転席に座る琥珀の顔を覗き込むと、やはり苦しそうな顔をしていた。琥珀にとっても、あの海は嫌な場所になっているのだろう。それなのにどうして――。  暗い道を走って走って、とうとうたどり着いてしまったのはあの場所。  私と琥珀が初めて結ばれた場所――そして、心を拒みあった場所……。 「ここに、来なければいけないって思っていた」 「どうして……」 「心の傷を、癒すために……。瑠璃との間に子供が欲しいから……でも、無理はさせたくない。もう、無理やり抱きたくはない」 「無理やりされたことなんて、一度もない」  そう、体の関係だった時ですら、私は望んで琥珀に抱かれていた。やめてと言葉では言いながら、心では願ってきた――。  私の言葉に、琥珀はぎゅっと私の頭を抱きしめてくれる。嫌だ、心が、痛くなる。色々なことを、思い出してしまう……。琥珀は気が付いているのだ、私が恐れていることに、子供を授かることに、抵抗があることに――。
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