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クリスマス・イヴは雪だった。厚く垂れこめた雲から舞い落ちる粉雪を繁華街のネオンが照らしだしている。
そんな特別なムードがただよう中、ある者は今宵子供たちに渡すであろうプレゼントを両手いっぱいに抱え、ある者は赤き衣装を身につけて商売に勤しみ、ある者は愛する者と手をつないでネオンの奥へと消え、そしてジャッジちゃんはマッチを売っていた。
行き交う人々相手にマッチを売りつけようという魂胆らしい。売れる予感など微塵もしないが、ジャッジちゃんはマッチ箱がたくさん入ったレジ袋を片手に声を張りあげていた。
「あたしの判定だと、このマッチはお買い得よ!」
マッチ箱を一つ手にとり、目の前を通った男を呼びとめる。
男は反応し、すぐに足をとめた。ジャッジちゃんのほうを向き、彼女の手にあるマッチ箱を認めるや否や腰を九十度に曲げ、突然大声で謝った。
「ごめんなさい」
よく見ると、男は全身スカイブルーのタイツという出で立ちで、肩にボロボロのラジカセを担いでいる。また、胸の部分にはデカデカと『めんご』の文字が書かれていた。まさに怪しいを絵に描いたような存在だ。
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