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「報酬を分けてなんて言わないわよ。私、魔物を狩ったことないから戦い方見せて欲しくて」
「金はいらない、じゃねぇよ! むしろこっちに金払え! 周りに人間がいたんじゃ、おれが適当に魔法ぶっ放せないだろうが!」
女が苅与の前に回り込むと、無表情だった苅与の顔が皮肉げに歪んだ。女は驚いた顔になる。
「あなた魔司なの? だったら余計、守りが必要じゃない?」
怒鳴られても、女はまだついて行こうとしていた。
『別に構わないだろう』
苅与は女を諭す労力を惜しんで、狼波に言った。
『……面倒だな。コイツ、薬飲ませて売っぱらおうぜ』
悪態を吐きつつも狼波に否定する気がないのを感じ取り、苅与は女についてくるよう促した。
「いいの? ありがとう!」
女は深々と頭を下げた。
雷亜という名のその女は隣街の住人で、要領良く魔物を狩らない国に痺れを切らし単独で魔物狩りをしようと街を出てきたそうだ。さすがに初めから一人で行動する気にはなれず、経験のある狩り人を探していたところで苅与のことを聞いたらしい。
「そう言えば、あなたの相方は? 一緒じゃないの?」
雷亜の問いに、苅与は簡単に寄生魔司を説明した。その後、洋館に着くまで苅与は一言も話さなかった。
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