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 昨日逃した魔物を全て狩り終えるまで、一時間とかからなかった。既にほとんど倒していたし、狼波が一度に複数の魔物を倒せたからだ。 「何もしないのに魔法が出るなんて、凄いわねぇ」  雷亜は籠手をはめていたが、結局は本当に戦い方を見ているだけだった。近くの魔物は苅与が全て狩ってしまったからだ。 「何もしていなくはない。狼波が精神集中をしている」 「苅与さんの中で?」 「そうらしい。もう自分の体に帰ったがな」 「何それ、ヒドイ!」  突然雷亜が声を荒げた。 「仕事が終わったら自分だけさっさと帰っちゃの?!」  苅与は何も返さなかった。移動中に狼波がいてもいなくても、大した問題ではなかった。  夕暮れ時に街に着いたが、雷亜はずっとついてきた。 「狼波とかいう人に文句言わないと気が済まないの!」  と、彼女は頬を膨らませた。  報酬を受け取ってから宿に戻り、狼波の部屋の扉を叩く。返事がして扉を開けると、狼波は昨日のように上半身をさらして寝台に身を起こしていた。そして寝台の縁に短い黒髪の女が座っている。女が立ち上がると、 「じゃあね」  と、狼波は無垢な瞳で女を見上げた。女は笑顔を残して部屋を去っていった。  雷亜は呆然としていたが、はっとして詰め寄った。 「何よあなた! 苅与さんが苦労して戻ってきたのに女の人なんか連れ込んで」  苅与は無表情で、ただ疑問に思ったことを口にした。 「昨日の女ではないな」 「不潔だわ! 苅与さん、こんなやつと組むのはやめましょう!」  雷亜はそれで更に怒りを増したようだった。穏やかな振りをしていた狼波は、一変して質の悪い目付きで雷亜を睨む。 「てめーには関係ねーだろ! 帰れ帰れ」  苅与は二人に構わず、狼波に報酬の分け前を差し出した。 「お、ありがと。五ももらっていいのか?」 「ああ」  言いながら苅与は、自分の分け前から一割を取り出し雷亜に手渡す。 「え?」  雷亜が訳も分からず金と苅与を見比べると、狼波が無防備に握られた一割を奪い取った。 「何やってんだよ、こいつ何もしてねぇだろ! つーか邪魔だったじゃねーか!」 「後方を警戒してもらった」  金を雷亜に戻すと、苅与は扉に向かった。 「明日は一日休む。明後日街を発つ。いいか?」 「ああ」  狼波が布団に体を沈めると同時に、雷亜が苅与の手を掴んだ。 「私もついていくわ!」
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