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年末パーティー
建国祭での襲撃から一週間以上。大変な事があったからこそ平時は賑やかに。そんな感じになっていた。
「年末のパーティー、ですか?」
ウキウキとするウェインに、ランバートは問い返す。
思えば去年はこの時期に熱を出して出られなかった。だからこそ、その実態を知らないままだ。
一方のウェインはとても楽しそうにしている。いつも楽しそうではあるのだが、いつもより多少上乗せで。
「今年は来るでしょ?」
「えぇ、そのつもりです」
建国祭の事件でオスカルが負傷したことで、年末の遠出はお預けとなった。
かなりしょぼくれたファウストを前にすると少し可哀想ではあって、その代わり王都の近辺に場所はないかと考えているが。
「あのね、年末パーティーはラウンジなんだけど、余興が楽しいんだよ」
「余興ですか?」
何をするのか。嫌な予感しかしない。
「えっと、入り口でカードを渡されるんだ。入って来た順でね。それで、色々とやることになる。歌を歌うとか、一発芸とか。それはね、カードを引いてお題を決めて、手持ちのカードで披露する奴を決める。これがまたね」
「あ……」
ある意味罰ゲーム。いや、酒の席だとよくあることだ。
「ちなみに、拒否権ありますか?」
「ない。って、言いたいけれど、公開告白か公開キスで免除になる」
「ただの地獄じゃないですか!」
それなら歌でもなんでも歌うほうがましだ。まだやらされてる感があって救いがある。公開告白か公開キスって、それこそ地獄だ。
「…いかなきゃダメですか?」
「用事あるか、病欠じゃないと無理。帰省しないんでしょ?」
「…しません」
いや、いっそするのが賢いのか? でも、ファウストは動けないから、そうなると自分だけ。弱ってるっぽいファウストを置いて帰省したら、きっとションボリするだろう。
「まぁ、絶対に当たるとは限らないからね。そういうドキドキもあって楽しいよ」
「当たって後悔しませんか?」
「酒の席での事だもん、大した事ないよ」
あっけらかんと言ったウェインに、ランバートは重く溜息をついた。
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