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『いつもは、 事務所なのになぁ』 『事務所じゃダメなんだろ。 ところで、 いま何時?』 『十時三十分』 『時間的には、 ちょうどいい』  右手にしている腕時計で、 時間を確認し、 チケット売り場に歩き始めた。  ☆  チケット売り場に居たのは、 おばあさんだった。  おばあさんは、 二人を見るなり、 ニヤニヤ笑いだした。  朧は、 気にする事なく大人二枚分の代金を支払い、 チケットを受け取った。  その時、 おばさんが、 「かわいい彼女逃がしちゃダメだよ」  と零の顔を一瞬見つめ、 言ってきた。 ☆ 『俺は、 男だ』 『まぁまぁまぁ。 それぐらい、 お前が女性に見えたんだよ。 あのおばさんには』  手を離し、 左手で零の背中をトントンと軽めに叩く。
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