復讐開始

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 そして冷めないうちにパスタへ。  もちもちとした生の太麺を噛み締めると、濃厚な海老のうま味がガツンと舌を直撃する。  胡椒のぴりりとした刺激と、爽やかなレモンの香りが、こってりとした濃厚なソースを引き締めた。海老にかぶりつく。歯を押し返す様なぷりぷりした強い弾力と、ねっとりとした甘みにうっとり。  この海老の旨味がぎっしりのソースに、バゲットを浸してかぶりつきたいわね。  思わず赤ワインをくいっと飲んでしまう。チリ産のフルボディの赤が、ほどよい渋さと重さで、口の中の濃厚な味をさらりと洗い流してくれる。  魚介類には白って言うけど、私は赤ワイン派なの。貴方も赤ワインが好きだったわね。  今日は濃厚な料理が多いけど、ワインが舌をリセットしてくれるからいくらでも食べられそうだわ。  一口、一口ゆっくりじっくり味わう。向かいの空いた椅子を眺めて。一人だからひたすら料理を味わう事に集中し、その味を堪能して美味しさに浸った。  全てを食べ終えて、こつりとフォークを置くと音が静寂の中に響いた。 「ごちそうさま」  そう呟いても返事は返って来ない。満ち足りた満足感に浸って、思わず口からこぼれ落ちたのだ。これだけ美味しい料理を作れた自分を褒めてあげなきゃ。  嗚呼……美味しかった。美味しい物を食べるってやっぱり幸せね。……例え一人でも。  美味しさの余韻を忘れぬうちに、パソコンに向かって文章を打つ。どれ程料理が美味しかったか、140文字の短い言葉に旨味を凝縮させて。  写真と共に食レポツイートをTwitterに投稿する。ワクワクTLを眺めていると、次々と流れてくる「飯テロだ!」の叫び声。大成功に思わずガッツポーズ。  今日も一人飯。でも私の料理をネットで皆が楽しむネット食事会は悪くない。  私が飯テロツイートをすると必ず『貴方』のアカウントで「飯テロだ!」のレスがつく。  思わずニヤリ。してやったり。  厭なら見なきゃいいのに、毎回反応があるのよね。結局彼女とは別れたらしいし、今頃一人で私を振った事、後悔してるのかしら?  貴方が永遠に食べられない料理をTwitterにアップし続ける。これが私の復讐。
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