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「いやな予感がするなぁ」
制服、長い黒髪、黒縁メガネの地味可愛い女子高生には似合わない寂れた雑居ビル。
そこに一歩足を踏み入れた彼女 薔薇澪(そうびみお)はひとり呟いた。
「はぁ~」
大きなため息をついて見上げるのはビルの階段である。
毎度毎度三階まで登るのはめんどくさい。
しかも微かに感じていた匂いはやはり上からのようで階段を登るたびに強くなる。
「生臭い。」
澪は顔をしかめた。
可愛い顔が台無しだがそれも仕方ない。
彼女が感じているのは「血」生臭いだったから。
運動は嫌い、日向より日陰、人混みに出かけるならエアコンの効いた部屋でゴロゴロしていたい人間は階段を登るようにできている訳がない。
ぜーはーぜーはー、ひーひー言いながらようやく三階へ辿り着く。
「薔薇探偵社」の看板が掛かった扉の前に大きな青いポリバケツがある。
血臭はそこから強く匂っていた。
大人一人くらいすっぽり入りそうなポリバケツから漂う血の臭い。
嫌な予感しかしない。
「やっぱ開けるべきだよね」
澪は蓋に手を伸ばす前に手首に巻いたシュシュを使って髪を纏める
どうせろくな中身じゃないのは分かっているし、ろくでもないもんが髪についたら死ねる。
「よし!いくぞ!」
澪の口元が少し緩む。
いざ開けるとなるとちょっとワクワクしてきた。
好奇心が恐怖に勝る澪の悪い癖だ。
でもでもプレゼントはいつだって開けるまでが楽しいじゃないか。
例え中身が欲しい物じゃなくても。
「せーのっ!」
一気に蓋を取るとやはり強烈な血の臭いが辺りに広がった。
「うわっ!くさっ!」
澪は血臭に圧されるように顔を仰け反らせながら遠目にそーっと中を覗く。
赤い
骨つき肉がゴロゴロ入ったトマトスープ。
もしスープの皿で出されたら美味しそう!って言うところだけど。
骨つき肉は切断された人の体、トマトスープは流れ出た血液。
それはバラバラにされた死体である。
意外にも悲鳴は上がらない
「手と足が二本づつと頭部、胴体はひとつか」
凄惨な死体を前に全く驚かない女子高生はこれもまた異常だろう。
それどころか死体を詳細に観察している。
「たぶん一人の人間を解体したのね」
澪は死体のある部分に気づいた。
「で…男性と」
ちょっと嫌な顔をして蓋をする。
「なんでうちの前においてくかね?捨て猫ならまだしも死体遺棄とかほんとめんどくさい」
ふんと鼻息を荒くする。
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