認めてほしい

3/4
前へ
/9ページ
次へ
アリシアは幸せだった。エリが居てくれて。寂しくても、乗り越えられた。 エリの、優しくけれど無感情なその瞳や声が、アリシアは大好きだった。それと同時に、安心もしていた。 感情を持たないAIのエリなら、自分を嫌いになんてならないから。 「 ほら。アリシア、一緒に買い物へ行こうか 」 エリの声にハッとして顔をあげると、アリシアは一切の汚れを知らない瞳に吸い込まれそうになり、急いで視線を逸らす。 「 う、うん。今日は花屋さんに行きたいな。部屋のマリーゴールドとラベンダーを取り替えたいの 」 花もまた、アリシアが好きな物だった。優しく甘い香りと見た目で、己を癒してくれる。いつの日か、心が通じ合えるともアリシアは考えていた。 そんなアリシアの様子を、エリは見守ってきた。 「 そうだね。アリシア、そうとなったら早く行こう 」 エリがふんわりと笑う。 ドキっとした胸を誤魔化してアリシアは答える。 「 そうだね。じゃ、行こっか 」 ( ダメだって。エリはAIなんだから…我慢しなくちゃ ) 道を歩きながら、アリシアは泣きそうになった。どれだけ自分がエリを愛しても、エリは気付かないし、応えてもくれない。 愛して傷つくのは自分。それなら、愛してもいい。 そう思い詰めてしまう程、アリシアはエリに恋い焦がれていた。 レンガ通りのこの道は、昔から二人が通ってきた懐かしい道。 そんな懐かしさよりも、悔しさが勝ってしまう。 暫く歩くと、ふわりと花の香りが鼻を掠めた。 「 着いたね。さ、アリシア。花を選んで 」 「 う、うん… 」 名前を呼ばないで欲しい。ううん。本当は呼んで欲しい。 笑って欲しい。 感情の波に押しつぶされそうになりながら、アリシアは花を手に取った。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加