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アリシアは幸せだった。エリが居てくれて。寂しくても、乗り越えられた。
エリの、優しくけれど無感情なその瞳や声が、アリシアは大好きだった。それと同時に、安心もしていた。
感情を持たないAIのエリなら、自分を嫌いになんてならないから。
「 ほら。アリシア、一緒に買い物へ行こうか 」
エリの声にハッとして顔をあげると、アリシアは一切の汚れを知らない瞳に吸い込まれそうになり、急いで視線を逸らす。
「 う、うん。今日は花屋さんに行きたいな。部屋のマリーゴールドとラベンダーを取り替えたいの 」
花もまた、アリシアが好きな物だった。優しく甘い香りと見た目で、己を癒してくれる。いつの日か、心が通じ合えるともアリシアは考えていた。
そんなアリシアの様子を、エリは見守ってきた。
「 そうだね。アリシア、そうとなったら早く行こう 」
エリがふんわりと笑う。
ドキっとした胸を誤魔化してアリシアは答える。
「 そうだね。じゃ、行こっか 」
( ダメだって。エリはAIなんだから…我慢しなくちゃ )
道を歩きながら、アリシアは泣きそうになった。どれだけ自分がエリを愛しても、エリは気付かないし、応えてもくれない。
愛して傷つくのは自分。それなら、愛してもいい。
そう思い詰めてしまう程、アリシアはエリに恋い焦がれていた。
レンガ通りのこの道は、昔から二人が通ってきた懐かしい道。
そんな懐かしさよりも、悔しさが勝ってしまう。
暫く歩くと、ふわりと花の香りが鼻を掠めた。
「 着いたね。さ、アリシア。花を選んで 」
「 う、うん… 」
名前を呼ばないで欲しい。ううん。本当は呼んで欲しい。
笑って欲しい。
感情の波に押しつぶされそうになりながら、アリシアは花を手に取った。
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