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優しく漂ってくる花の香り。
それが懐かしくて、少し悲しい。思い出してしまうから。__あの日のことを。
あの日、エリが珍しく誤作動を起こしたのだ。AIの誤作動…それは、普通なら起こりえない出来事だった。
極めて精巧に作られているため、誤作動の類は起きないと保証されていた。
だからこそ、その誤作動はアリシアにとって恐怖だった。
狂った様に暴れ、破損しそれでもなお笑い続けるエリの姿。その後エリは、記憶・データ等を全て消去されることとなった。
そのせいか、3日程月日が流れた後戻ってきたエリが、全くもって別人で。
医師に言われたあの言葉は、アリシアの胸に残り続け、苦しむ種になっている。
そんなことを知らないのは、やはり別人だからなのだろう。エリが。
『 本来、この様に誤作動を起こすのは考えられません。
__ですので、まぁもう一度起こしたら、違うのに取り替えましょうね 』
『 えっ 』
そう告げられた日、アリシアはどんな顔をしてどの道を通り返って来たのか。
今でも思い出せない。
_______
「 シア……アリシア? 」
「 ………えっ? 」
アリシアはハッとして、エリを振り返る。心配そうにプログラムされている表情を見せるエリは、まだ正常らしかった。
それが分かり、アリシアはほっとして微笑んだ。
「 ごめんね。ちょっとボーっとしちゃった 」
平謝りしながら、そそくさと花を選ぶ。優秀なエリは、少しでも不審な行動を所有者が取ると、深く追求してくるからだ。
「 いや……別に良いよ。アリシアがボーっとしている時は、考え事をしている時なんだからさ 」
ほら。こうやって。そんなに笑わないで。辛くなるの、好きになっちゃうと。
だから…お願い。
「 じゃあ、帰ろ? 」
そうアリシアが口を開いた、その時。
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