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悔しみ
「 あの………ぼ、僕…アリシアさんが好きなんです……! 」
「 えっ……… 」
アリシアにそう告げたのは、近所に住む二歳年下のレンと言う少年だ。エリとは違い、れきっとした人間だ。
だからなのか、アリシアは反射的に声を漏らしてしまった。
動揺したのだ。
「 あっ………エリ、どうしよう… 」
困ったアリシアは、エリに視線を走らせる。その様子を見て、レンは悔しくて堪らなかった。自分は人間で、アリシアも人間。
エリはAIじゃないか。
それなのに、なんでアリシアはエリを選んだのだろう。
自分の方がアリシアを思いやれる。それなのに____!
沈黙が流れた。
______
「 …アリシア。ごめんね。僕はちょっと分からないな 」
エリはそう言って、沈黙を破った。それもそうだ。エリは、色恋沙汰……感情がどういう物なのかさえ、理解していない。
それが、複雑な気持ちを分かる筈がないのだから。
アリシアは、軽くショックを受けた。突き放された気がしたからだ。そう感じてしまうのは、動揺していたからだろう。
「 そ、そうよね。ごめんね、エリ… 」
「 ううん。気にしないで 」
胸の奥がぎゅぅっと締め付けられる様な笑顔が、エリの顔に描き出された。その笑顔を見て、アリシアは泣き笑いの様な表情をして見せた。
「 ありがとう 」
「 ____アリシア、さん……… 」
込み上げてくる涙を、レンは必至に堪えていた。
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