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それから一ヶ月もしないうちに二人は別れたという噂が流れる。ユリちゃんは三日も学校を休んだ。おれは校舎の非常階段に竹崎を呼び出し、ユリちゃんに何をしたと詰め寄った。
すると竹崎はへらへら笑いながら「お前が好きな女だって言うから試しに付き合ってみたけどつまんない女だった。おっぱいも小さいし」とのたまった。
おれは拳を振りかざした。竹崎を殴る。そう心に決めた。
竹崎は眉間にシワを寄せ顔を斜めに傾けた。
「いいよ殴れよ。一発だけだぞ」そう言って構えた。
けれどおれは殴らなかった。殴り方を知らなかったのだ。振り上げた拳を、どのような角度からどのような力で打ち込めば竹崎の頬にヒットするのか想像ができなかった。
しばらくおれの拳を待っていた竹崎は、へん、とバカにしたように言って逃げた。
おれの拳は行き場を無くした。あのときからおれは、竹崎を殴りたいとずっと思っている。
12月に入ってすぐ、竹崎からLINEがきた。
――12月23日と24日ひま?
23日の土曜日は祝日で、カレンダー上では赤い連休である。
暇だった。だがおれは確認した。おれが暇かどうかは用件にもよる。なんで?とおれは返信する。
――ひまじゃないなら別の奴誘うからいいや
おい用件。
さては暇だと答えたら用件を言うつもりだな。仕方ないのでおれは正直に暇だと改めて竹崎に返信した。
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