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沙夜は、僕と付き合うようになってからは親友の美星みたいに明るくて元気な性格になったが、元は暗くて自分に自信がない気弱な子だった。だから、彼女は、メールのやり取りで僕との絆が確かなものであることを確認したいのだろう。
「沙夜、怒っているかな?」
そう呟きながら、僕は沙夜のメールを確認した。
『今、どこにいるの?』
僕は三秒ほど言葉の意味が分からず、スマホの画面を見つめながら固まってしまった。だが、すぐに、メールを送ったのにいくら待っても返信がないから僕がどこかに出かけていてメールの着信に気づいていないのだと沙夜は思い、もう一度メールを送ったのではと思い至った。それで、「今、どこにいるの?」なのだ。
「心配させちゃったかな……」
電話の不在着信が十件。全部、沙夜からだ。沙夜は留守電にはメッセージを残さない。
『ピーッという発信音の後にメッセージを残してください』
と、言われると、沙夜は慌てて電話を切ってしまうのである。
「私、機械音痴だから……」
と、本人は言っているが、機械音痴と留守電にメッセージを入れるのは関係ないと僕は思う。
「今から返信しても沙夜は寝ているだろうけれど、一応メールを送っておくか」
翌朝、「メール返信できなくてごめん」と謝ればいいような気もしたが、彼氏としてそれはちょっと冷たいがする。
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