双子

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 僕は、病気の妻に冷淡な態度を取っていた父さんのことを今でも恨んでいる。今の父さんは反省して変わったが、それでも僕は父さんのことを心の奥底では許しきれていない。だから、自分の大切な人を僕は粗略に扱いたくないのだ。  僕は、メールの着信履歴を(さかのぼ)り、今夜、沙夜が最初にどんなメッセージを送ってきたのか確認してみた。 『会いたい。今どこにいるの?』  ……夜に会いたいって、何かあったのか? 緊急の用事?  でも、本当に大切な用事で僕にどうしても連絡したいことがあって、僕が返信してこないのならば、美星に連絡するはずだ。  以前はケータイを家に置き去りにしてしまうことがよくあった(今回は久しぶりに忘れた)僕とは違い、美星は外出時にちゃんとピンクのガラケーを持ち歩いている。美星に電話をすれば、美星といつも行動を共にしている僕に連絡がとれると幼馴染の沙夜なら分かるはずだ。  美星は「沙夜から電話だよ」と僕に言わなかった。ということは、美星にわざわざ連絡をしてまで僕と会わなければいけない緊急の用ではないのかも知れない。  ……しかし、遠慮深い沙夜にしては、夜に「会いたい」なんて……。  しばらく考えた僕はスマホを操作し、返信の文章を作成した。 『ごめん、今メールに気づいた。大切な用事があって今も起きているのなら、電話してくれ。僕もしばらくは起きているから』     
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