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沙夜の表現が、美星の笑顔には一番ふさわしい。美星の微笑みには人を元気づける不思議な力がある。この笑顔をずいぶんと長い間見ていなかったような……とても懐かしい気がして、僕の胸は不思議と熱くなっていた。
……美星の笑顔がなぜ失われていたのか?
頭の中でずうぅぅぅんと鈍く重い感覚がして、何かを思い出しかけたが、深く考えようとするとなぜか急激な眠気に襲われた。
何だ、これ……?
僕が困惑しながら頭を振って眠気を必死に追い出そうとしていると、
「みっちゃん。やっぱり無理してたんだ。眠たいのなら帰ろう?」
と、美星が僕の顔を覗き込んで言った。
美星は僕が何を考えているのかを顔色から読もうとして、こうやって僕の顔を覗き込む癖がある。そして、百発百中で僕の考えていることを当ててしまうのだ。
「もしかして、調子悪い? 風邪?」
「いや、僕は大丈夫……」
「でも、大事をとってもう帰りましょう。星はいつだって見られるんだから」
「うん……」
あまり意地を張って姉を心配させるのは良くないと考えた僕は、大人しく従うことにした。そして、
「今度は毛布や温かい飲み物を準備して来よう。そろそろ寒くなってくるから」
と、美星に提案するのだった。美星は微笑み、
「冬になったら、また一緒に星を見ようね。澄み渡った冬空は、星々の瞬きがとっても綺麗だよ」
そう言うと、僕に小指をそっと差し出した。
「約束」
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