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「美星はね、自分が笑顔でいることで光明たち家族にも笑ってもらおうと、がんばっていたんだよ」
「さ、沙夜……?」
今さっきまで薫がそばにいると思っていたのに、僕にそう言ったのは沙夜だった。しかも、僕と付き合う前の内気な少女の沙夜である。
「いつも恐い顔をしている家族に笑顔になって欲しいから……。せめて自分だけは笑顔でいて、美星の笑顔につられて家族がいつか笑ってくれる時を待っていたんだよ」
「美星のキラキラの笑顔にそんな意味があったなんて……。沙夜はそのことを知っていたのか?」
「……うん」
「そうか……。結局、美星だけが家族と真っ直ぐ向き合っていたんだ。それなのに、姉に守られてばかりいた僕が、美星が望んでいた円満な家庭の幸福を今まで味わっていたんだな……」
僕は、だんだんと思い出してきていた。
美星が、「死んだ」こと。
美星の「死」という大きな衝撃が、皮肉なことに家族の絆を取り戻すきっかけとなったこと。
僕と沙夜は、美星を失った悲しみを互いに理解し合う存在として求め合い、恋人になったこと。
高校に進学し、美星と同じ天体観測の趣味を持った薫と出会って親友になり、沙夜、薫と共に一見幸福な高校生活を送ったこと。
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