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しかし、間接的に美星を死に追いやってしまった、僕を含めた家族を心の奥底では許せず、ずっと苦しんでいたこと。
大学に入ってから沙夜と距離をとり、孤独を深めていったこと……。
「姉ちゃんを失ってからの六年間、僕はいったい何をしていたんだ。家族を恨み、恋人を傷つけて……。誰に対しても不寛容な僕がなぜ生きていて、全ての人間に寛容であろうとした姉ちゃんがなぜ死んだんだ? やっぱり、逆であるべきだったんだよ。姉ちゃんの命日に事故に遭ったのは、きっと姉ちゃんが迎えに来てくれたんだ。だったら、僕は姉ちゃんと偽りの夢の中でずっと……」
「私は、そんなこと望んでいないわ」
目の前の沙夜が、白いワンピースを着た美星に変わり、怒った口調で僕にそう言った。
背中には小さな白い翼がついていて、まるで天使のようだ。
「姉ちゃん。僕は……」
「みっちゃん、起きなさい。あなたはいくつになっても寝ぼすけなのね」
美星は声を和らげ、生前と変わらぬ優しい眼差しで僕に微笑みかけるのであった。
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