恋人

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 光明にとって美星はただの姉で済む存在ではなく、彼女の死は光明の死に(つな)がりかねなかった。このままでは光明が自殺するかも知れないと危惧(きぐ)した私は、美星の代わりに光明のそばにいて彼の世話を焼き続けた。  それは、亡き親友への忠誠心からきた行動だったが、それだけでなく、私とどことなく同じ匂いを持った彼にほのかな好意を以前から持っていたからでもあった。  しかし、根暗な性格の私には、どう励ましたら光明が元気を出すか分からなかった。 (美星なら、どうしただろう……)  悩んだ挙句、私は光明の前で美星のように明るくてニコニコ笑っている女の子を演じてみせた。  最初、その演技はとてもぎこちなく、頭に描いた台本を棒読みしているようなものだった。しかし、光明は、 「沙夜。少し姉ちゃんに似てきた?」  と言い、美星が死んでから初めて笑ったのである。弱々しい笑みだったけれど、その時、私はとても嬉しかった。光明を笑わせることができて、本当に嬉しかったのだ。  翌日から、私と光明は放課後に手を繋いで帰るようになった。今、思い返してみたら、私と光明はどちらからも告白などしていない。知らない内にお互いを必要とする関係になっていた。あえて言えば、私が「美星」を初めて演じた時、今の関係がスタートしたのだ。     
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