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僕が目を覚ました喜びに浸っていた父さんと母さんは、自分たちがするべきことを思い出し、急に慌ただしく動き始めた。僕はそんな二人を目で追いながら、父さんと母さんとは違う別の気配を感じていた。
美星が、どこかで見ているのだ。
姉ちゃんは約束通り、僕を見守ってくれている。そう分かっただけで、これからの人生、心細くはないと思えた。
そうだ。たとえ死別しても、その人との絆が失われるわけではない。美星とは、今でも家族の絆で結ばれているのだ。それなのに、僕は今まで美星を失ったことに絶望し、僕のそばにいる生きている人たちとの絆を疎かにしてきた。
今ある命もいつかは失われるのに、美星の時と同じように別れは必ず来るというのに、生きている隣人を大事にしていなかった。そんな生き方を続けていたら、僕は大きな後悔を生きている内に何度もしなければいけないだろう。
沙夜と、ちゃんと話をしよう。僕はそう決意した。
☆ ☆ ☆
夜明け前、僕の元に一番に駆けつけてくれたのは、病院から家が近い薫だった。
「美星さんが、君を守ってくれたんだね。山本さんの言っていた通りだ」
病室に現れて僕の顔を見た薫が最初に言った言葉がそれで、僕は「え?」と驚いた。そういえば、母さんも僕が目覚めた時にそんなことを言っていた。
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