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美星は難しい顔をしていても僕が話しかけると、必ず笑顔を見せてくれる。それを分かっていて美星を無理に笑わせ、姉ちゃんが笑ってくれたと喜んでいるのだから、やはり僕は愚かな弟なのである。
☆ ☆ ☆
「お帰りなさい。こんな時間まで星を見ていたの? 明日も学校があるんだから、歯を磨いたらすぐに寝なさい」
僕と美星が家に帰り、玄関で靴を脱いでいると、母さんの優しい声がキッチンから聞こえてきた。……良かった。怒られなかった。
「うん、そうするよ」
「でも、その前に味噌汁を飲んで体を温めなさい。外は寒かったでしょう?」
僕と美星がキッチンに行くと、残業をして帰って来た父さんがテーブルで遅めの晩ご飯を食べている最中だった。
「母さんが味噌汁を作ってる……」
美星は目をまん丸にしてそう呟いた。
「何を大げさに驚いているんだ、美星は。お前も毎朝母さんの味噌汁を飲んでいるじゃないか。ほら、美味しいぞ。お前たちも食べなさい」
父さんがそう言い、以前なら絶対に見せることはなかった笑顔を僕と美星に向けた。
僕は母さんが作った少しワカメが多めの味噌汁が大好きだ。だから、嬉々として「うん」と頷き、テーブルに腰を落ち着けた。
美星も僕の隣に座り、味噌汁をずずっと小さな音を立てて吸った。
「美味しい。本当に久しぶり……」
美星は感慨深そうに言い、ほうっとため息をついた。
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