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僕と美星は、あっと言う間にお椀を空にした。
「ごちそうさま。僕たち、もう寝るよ」
僕はそう言いながら立ち上がり、美星と一緒にキッチンを後にした。
……と思ったら、美星はキッチンの入口から動かず、父さんと母さんをじっと見つめていたのである。
「どうしたの、姉ちゃん」
僕がそう聞くと、美星はハッとなり、
「う、ううん。何でもない……」
と、歯切れの悪い返事をした。
……いつもハキハキしている美星らしくないな。
「どうして……」
美星がそう呟いた。
何が、どうして、なのか。美星は何に疑問を抱いているのだろう。僕は首を傾げたが、美星はそれ以上何も言わなかった。
☆ ☆ ☆
僕と美星は歯を磨き、おやすみの挨拶をすると、それぞれの部屋に入った。
「あ……。ケータイ、部屋に置きっぱなしだった」
机に自分のスマホを見つけ、僕は着信履歴を慌てて確認した。
恋人の沙夜は、毎晩メールを送ってくる。
今夜観た恋愛ドラマの感想だとか、数学の宿題が難しいだとか、他愛もない内容ばかりだが、沙夜は僕と付き合い始めてから夜のメールを一度も欠かしたことがない。僕はその長いメールの文章を読むと、返信して眠るのが日課なのだ。
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