星の瞬き

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星の瞬き

 即死しなくて良かった。  頭から血がどくどくと流れ、これはもう自分はお終いなのだと察した時、抱いた感想がそれだった。  だって、もしも車にはねられて即死していたら、クリスマス・イヴの夜空に(またた)く星々をこんなにもゆっくりと見上げることはできなかっただろうから。 「そういえば、最近、下ばかり見ていたな……」  か細いその声は、近くに人がいたとしても聞こえなかっただろう。川原で仰向けに倒れている体はびくとも動かない。 「……終わる……のか……」  誰にも看取られずに死ぬのは孤独だ。唇を震わせて独り呟き、寂しさを紛らわす。  長い間、自分の力ではどうしようもない不幸と戦い、ずっと苦しかったのだ。とても辛かったのだ。  延々と闇が続くトンネルのような苦しみの日々から抜け出したかった。でも、自分に与えられた人生から逃げることなどできず、心の中で悲鳴を上げていた。  苦しみから救われたいという思いが自分を死へと誘ったのかも知れない。こんな形でしか自分には救いがなかったのだ。でも……。 「冬になったら、また一緒に星を見ようね」  あの約束を果たさないまま、こうして自分だけが星空を眺めていることが唯一の心残りだった。  寒々と澄んだ夜空は星々がよく見えて、冬の大三角形が南の空に美しく輝いている。この星たちの(またた)きを自分の大切な片割れにも見せてあげたかった。もう一度、一緒に星を見たかった。 「一人は……嫌だな」  意識がだんだんと薄れ、星の瞬きも見えなくなり、唇も動かせなくなる中、心の中でそう呟いた。終わりを迎える時まで、何度も何度も呟いた。
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