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貧乏で、でもサーカスに命を掛ける夫婦に愛情深く育てられるのだけど、団員の中に夫婦を良く思っていない人がいて、それが原因である事件が起こり、父親が足を骨折してしまう。
玉乗りの名手だった父は、骨折のせいでバランスが取りにくい足になり、絶望し、人が変ったように問題を起こすようになる。
思春期に入り少女へと成長した主人公は、サーカス団という小さな世界に囚われている自分の生活を疑問に思い、外の世界へのあこがれが強くなった15歳の夏、とうとう家出してしまう。
団員の金庫から盗んできた少しのお金で船に乗り逃亡し、年齢を偽り酒場で働き、男性に酷い目に合わされ、それでもサーカス団には戻りたくないという気持ちが彼女をより強く成長させた。
私は、彼女とはまるで違う。
釣り好きの能天気な父と料理好きの過保護な母のもとで、悠々と暮らしている。
日々の小さないざこざはあるものの、その詳細は眠る時にはすっかり忘れてしまっているくらいの、くだらないことだ。
生ぬるくて優しい環境に甘んじている私は、体を張って自分の人生を生きようとする彼女とは、対極のところにいるのだ。
でもこの小説を読むと、彼女の身に起きた全てが、まるで自分が経験したかのように感じられた。
小さな世界から抜け出したい一心で団員の金を盗む時の、罪悪感と恐怖を想像して息が苦しくなった。
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