私を呼ぶ本

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船に乗り、団のテントを遠くから眺めた時の、喜びと寂しさが入り混じった複雑な思いは一日中引きずってしまった。 私は彼女に共感し、応援し、励まされながら、一緒に成長しているような気がする。 いつのまにか、私の乗っていた電車は動き出していて一つ目の駅の名前がアナウンスされた。 物語の中の少女は、客の中で最も無口だった男性に恋をする。少女にとっての初めて恋。 男性も少女を好きだと知って、二人の想いは一気に加速する。 少女は女性になり、男性の子を身ごもる。そして。 私は小説のラスト数ページを残して、本を閉じた。 終わってほしくないと痛切に思った。 最後に目に入った、自分の子を抱いた主人公の放つ台詞が、あまりにも心に響いて。 私は本を抱きしめた。 まだ読んでもいないラストを想像しただけで涙がこみ上げた。 本を胸に抱いたまま顔を上げると、みな窮屈そうに混んだ車両でバランスを取っていた。 ひどい混み具合で空気が薄いけれど、それでも私の気分は晴れ晴れとしていた。 希望を見つけたのだ。彼女は。 自分の人生を自分の手で掴み取り、そこに背を向けることだけが唯一心の支えだった彼女が、初めて自らサーカス団を求めた。 目の前で揺れるスーツ姿のサラリーマンたちが、主人公が立っている麦畑を埋め尽くす、黄金色の穂に見えた。     
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