水平器

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水平器

 目覚ましの音で目が覚めた。夕方の五時三十分だ。やけに寒い。カーテンの隙間から窓の外を眺めると、大きな牡丹雪が降っていた。俺は決断した。バイトを辞めよう。そうつぶやいて布団に潜り込むとパジャマのズボンに手を入れた。  はっとなり飛び起きると、風呂に入り熱々のシャワーを浴びた。俺には夢がある。そのために金を貯めなければならない。俺は乱暴にバスタオルで体を拭くと、温かいインナーを着込みバイト先に向かった。  俺は道路整備の会社で交通整備のバイトをやっていた。深夜帯は割増料金がつき、一日、一万五千円を稼げる。口数の少ないおっさん達とライトバンに乗りこむと、どこか遠くに連れて行かれた。たしか今日の仕事は、県境近くの温泉街だった気がする。  俺は現場につくと誘導灯を握り締めた。真っ赤なライトセーバーみたいなやつが俺の相棒だ。俺はそいつ一本を握り締めると、道路工事のバリケードからだいぶ離れた場所に立った。背中ではガリガリとアスファルトをほじる音が聞こえる。     
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