水平器

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「お返しは高くついただろ?」  お返し? 考えたこともなかった。俺は笑って誤魔化すと雪の降る道路に戻った。  俺はそれから、誰もこない深夜の道の真ん中で、彼女のことを考えた。そういえばあいつと付き合って三年。俺は何度もあいつのことを裏切った。やりたいことが見つからないの一言で、何度も何度も仕事を変えていた。  不思議だね。なんであいつ、俺に愛想をつかさないのだろう。本当は愛想をつかしているのだろうか。どこかにちゃんとした本命の学校の先生なんかがいて、俺はマヌケのサンプルとして観察されるハムスターなのかもしれない。  朝が来た。部屋に帰って眠る。そして、あっというまに夜が来る。俺は目覚ましに起されたあと、ポケットのなかの水平器を取り出してみた。カーテンの向こうには今日も雪が降っていた。俺は早めに家を出て彼女の家を目指した。残念なことに手ぶらに気づく。俺は彼女のマンションのしたの自動販売機でお汁粉を買った。それから彼女の部屋のインターホンを押した。 「こんちゃ」 「……え、また仕事を辞めたの?」  おお、予想どうり信用がない。俺は笑顔で彼女に答える。 「違うよ。クリスマスのお返し、まだだったから。水平器のお返し」     
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