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雪が降る。
しんしんと降る雪を見上げるために立ち止まっているのは僕だけではないはずだ。
道端で立ち止まり、白一色の紙吹雪のようなそれを手に乗せてみたりして。
僕は子供の様に感動していた。
僕は更に雪を体感したくて手袋を外した。
手に乗った雪はすぐに溶けて小さな水の粒に変わる。
僕はそれを飽きずに見ていた。
……と、ふと視線を感じた。
近くのコンビニから出てきた女性が僕を見て笑っていた。
僕は嘲われたと思い顔を真っ赤にして俯いた。
だってその女性がとても綺麗だったから意識してしまって余計に恥ずかしかったのだ。
僕はその綺麗な人が通り過ぎるのを待った。
俯いた顔を少しだけ上げて歩いて来ているのを確認する。
通り過ぎるまであと五歩、四歩、三歩、二歩……
それ以上は数えられなかった。
その女性は僕の目の前で立ち止まったから。
思わず顔を上げる。
その女性は嘲ってはいなかった。
優しく微笑んでいたのだ。
「雪…綺麗ですよね。お好きですか?」
「は、はい!好きです!」
緊張してどもってしまって恥ずかし過ぎる。
名誉挽回したくても僕にはそんな話術はなく……
「お一人ですか?……べ、別にナンパとかじゃないんですよ。ただ、あなたみたいな綺麗な人が……」
「……ありがとう……」
どうやら僕は墓穴を掘ってしまったみたいだった。
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