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僕はこれ以上下手なことを言わないために口を閉じた。 「私、沙良と言います。あなたの名前を教えてください。」 沙良さんは僕の失言に立ち去るどころか横にあるフェンスに寄りかかり袋をガサガサ言わせ始めた。 「僕は、聖也と言います。」 「聖夜さん?今日にぴったりの名前ね。これ、よかったら。」 袋から出して渡してくれたのは肉まんだった。 「ありがとうございます。せいやは聖なる夜の聖夜じゃなくて聖なるなりです。」 肉まんを握っている手が熱い。 いや、ポカポカしてて心地いい。 自分の手が結構冷えていたことに気付き笑った。 何て鈍いやつ。 「あんまり直接雪を見たことがなくてはしゃいでしまって。」 僕はそれだけ言った。 ずっと病院にいて窓越しにしか雪を見たことがなかったから嘘は言ってない。 「私もです。」 長い髪を後ろで束ねてから手を出した沙良さんはどうやら僕と同じことをしようとしているみたいだった。 降る雪降る雪、手のひらで溶けるまでを見守っての繰り返し。 と、くしゅんと可愛いくしゃみの音が聞こえた。 「大丈夫ですか?」 僕が尋ねると再び小さなくしゃみ。 上着を脱いで沙良さんの肩にかけた。 「家は近くですか?」 僕は送り届けようと訊ねた。 「ええ…」 ちょっと躊躇った返事に家を僕に知られたくないのだろうと思った。 「ちょっと待っててくださいね。」 僕は返事を待たずダッシュでコンビニへ。
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