【不気味な同居人】

12/13
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
メガネは返してあげた、彼女はホッとした様子でそれをかける。 二人で食卓の準備を始める。 あーなんか……。 「新鮮でいいですね、初めて二人でこんな風に。」 テーブルを布巾で拭きながら言うと、料理を取り分けていた彼女の手が止まった。 恥ずかしそうに真っ赤になって、あーかわいっ。 彼女がカウンターに次々器を並べる、俺はそれをテーブルに置くのだが。 いたずら心で。 小鉢を置いた彼女の左手首を掴んだ、彼女が悲鳴を飲み込んで手を引っ込めようとするけれど、勿論簡単そんな事させやしない。 「なんですか……っ!」 上目遣いのその瞳は、レンズから外れて本来の可愛らしさを見せる。 俺は笑った、彼女には見えていないんだろうな。 俺を拒否するように引っ込めかけた状態のその手の平に、俺はキスをした。 「~~~~~!!!」 彼女の声にならない悲鳴を聞いた。 俺が手を離すと、彼女は自分の手を取り返すように引っ込める、いいなあ、可愛い反応。 「鷹栖さん!」 耳も首までも真っ赤にして、彼女は怒鳴る。 「て、手の平にキスなんて……!」 「いきなり唇って訳にはいかないでしょう?」 「当たり前です!」 あ、でも、拭いたりはしないんだ、手をぎゅっと握り締めてる。 「済みません、可愛い手だったので、つい。」     
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!