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雪の日は、いつもユーウツだ。
何故って、滑って、よく転ぶ。
あっちですってん、こっちでころりん。
雪が降った日、必ず一度は転ぶのだ。
あたしは、今夜もユーウツだ。
授業が終わって塾を出てみりゃ、雪がどっさり積もっている。
夜で道が暗いから、普段の数倍、転びそう。
だから、あたしは仕方なく、隣の男子にそっと言う。
「滑るとヤだから、手を繋いでて」
彼が頷き、ふにゃんと笑った。
だらしない顔。締まらない顔。あたしが一番好きな顔。
見つめることもできなくて、あたしはぷいっとそっぽを向いた。
あたしの右手と、彼の左手。そこだけじんわり、温かい。
彼と二人で、ゆっくり歩く。危ないからと言い訳しながら。
握った右手に、指を絡める。寒くなったと誤魔化しながら。
雪の夜は、ユーウツだ。
こんなときさえ素直になれない、自分のキモチに気づくから。
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