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どれくらい時間が経っただろうか。俺は誰かに揺り起こされていた。
「しっかりしろ。大丈夫か?」
俺は目を開く。いったい何が起きたのだろうか。
「起きました! 意識はあるようです!」
救助隊らしい制服の男が、背後に向かって叫んでいた。どうやら、助かったらしい。
それにしても、かなり寒い。少し動くと、毛布がずり落ちた。救助の人たちがかけてくれたらしい。
車のキーを抜こうとして、自分の手が動かしづらいことに気づく。すっかり冷たくなっているようだ。あといくらか時間が経っていたら、俺は本当に死んでいたかもしれない。
俺は暖かいヘリに乗せられ、病院に搬送された。
「助けていただいて、ありがとうございます。でも、どうしてわかったんですか?」
俺は50くらいの救助隊の男性を捕まえて、尋ねた。
「キミの職場から、キミの携帯がずっと圏外でおかしいって連絡があってね。あの大雪の中帰ったから、心配で何度か電話したって言ってたよ」
俺のことを心配?
「キミの職場と住所がわかったから、雪が止んでから捜索したんだ。降っている中では、危険すぎて捜索できなかったけれど」
その男性は、ただ、少し不思議そうな表情をして俺を見つめていた。
「ところで、逆に訊きたいんだけど、どうやってあの軽で生き延びたんだい? 普通、あれだけの時間、放置されたら、生きてはいられないだろう」
俺は苦笑した。危ないところだった。
「信じてはもらえないと思いますけど……妖精が助けてくれました」
本当は、雪を降らせたのも妖精だった。でも、助かったから許してやろう。
こんな俺でも心配されることがあるのだ、と知ることができたのだから。
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