立ち往生

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 降り続ける雪を車窓から眺めながら、俺はため息をついた。雪にはまって動かなくなってしまったオンボロの軽自動車。  油断していた。この大雪を舐めてはいけなかった。こんなことなら、無理してバイトに出るのではなかった。たとえ出かけたとしても、現場から無理に帰ろうとするのではなかった。  バイト先から帰るときにステンレスボトルにコーヒーを淹れ直したが、コーヒーだけでは不十分だ。車の暖房を切って夜を明かせば、俺は死んでしまうだろう。だが、このままエンジンをかけっ放しにしていたら、いずれはガソリンが尽きてしまう。そうなれば、やはり死は近い。  誰かを呼ぼうにも、この一角はど田舎で、携帯も圏外。アンテナがないらしく、電話もネットも繋がらない。  今さら後悔しても遅い。  車のエンジンを切って、車外で暖を取る場所を見つけなければならない。何としてでも、大至急。  せめてここが都会か町中で、家の一軒でも近くにあればいいのだが。  俺はもう一度、ゆっくりと窓の外を眺め回した。  降り積もった雪で、道も丘も一面の白。木の葉や枝にも、雪がたくさん載っていて、その重みで枝がしなっている。  この調子では、マフラーの周辺の雪をどけておかないと、一酸化中毒を起こしてしまう。積もるペースが速いので、長く眠るのも危険だ。  俺はもう一度ため息をつき、黒いマフラーを巻いて運転席から降りる。ドアの前に積もった雪を蹴り飛ばし、後方へ回った。  案の定、マフラーの周辺にも雪が積もっている。せめて木の下にでも止まっていたら、ここに雪が積もる心配などしなくて済むかもしれないが。  ふうと息を吐いて顔を上げる。ふと、少し離れた木の陰から、うっすらと光が漏れてきていることに気づいた。  こんなところに、家なんてあっただろうか。誰か人がいるだけかもしれない。  それでも。ひょっとしたら、助かるかもしれない。  俺は急いで運転席に戻ると、エンジンを止めて車のキーを抜く。そのまま外へ出ると、手動で車に鍵をかける。  消えてしまわないことを切に祈りながら、漏れてくる光のほうへと走った。
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