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「遠慮なんてしないでいいですからね。困ったときは、みんなお互い様なんです」
甘えたい。泊めてほしい。
それでも、俺はタダで泊まるなんて、ミチヨお婆さんに迷惑がかかるだけだと感じてしまっていた。
「俺が何か、お手伝いできることはないですか?」
気がつくと、俺はそう言っていた。
「いいえ、どうぞお構いなく。あたしはとっても元気ですからね」
それでは俺が困るのだ。まさか何もしないで、ただ世話にだけなって帰るわけにもいかない。
それに。一晩で済む保証もない。まだ雪は降り続いている。この調子では、除雪車は出動できないだろうから、おそらく、明日の朝は、雪が残っているだろう。車が半分雪に埋まったとしても、俺は特に驚かない。
お婆さんはニコニコしたまま、俺のほうを見てくる。
「隣のお部屋を用意するから、ちょっとお待ちくださいな」
お婆さんは膝に手をついて立ち上がると、ふすまを開けて、さっさと奥へ引っ込んでしまう。
確かに一軒家だし、ど田舎だ。いくつか部屋はあるのだろう。家族がいないのだろうか。みんな大人になって、家を出てしまったのかもしれない。
それでも、居心地の悪さは消えなかった。こちらから何も言わないのに泊めてもらえるなんて、奇跡だと思った。
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