第3話〔帝王と呼ばれたい男〕

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「それはだな、お姉さんはちゃんと紙にローマ字を書いて「TETSUYA.OKAWA」名前と苗字の最初の文字と言ったんだ。だから、「ティー、オー」と発音したにも関わらず、大川君には「てーおー」と聞こえたんだ。もともと「大川」の「おー」と「OKAWA」の「オー」は同じ発音だからな。しかも、お婆さんの「てーてーてー」とかもよく聞いていたから、「てー」は身近な存在だったんだろう。さらに親も「てーおー」と発音してる大川君を誉めらたらしいんだ。」 「え~?なんで間違ってるのに誉められたの?親なら間違ってるときはビシッと言わなきゃ。」 憂樹がチョップの真似事をしながら言った。 「まあ、今の時代は間違いに気づくかも知れないが、英語の「英」の字も知らない小学生がいきなり英語を言ったんだ、「ティー」の発音が出来なくても不思議はないだろ。」 「それは、まあ、そうだけど。たしかに今でも幼稚園児が「T」を「てー」って言っても違和感ないかもな。」 風見が納得したように頷いた。 「それから大川君はどうなったの?いくらなんでも間違ったままって事はないでしょ?」 清美が心配そうに聞いてきた。 「さすがだな、水川さんの言う通りだ。いくら英語を習ってない小学生でも、クラスの中には何人か、お兄さんやお姉さんが居て「イニシャル」を知ってる奴は居るもんだ。 だから、大川君の話も、あっという間に広がって、あっという間に間違いに気付いてしまったんだ。どや顔だった大川君も恥ずかしさのあまり、真っ赤になって、その日はずっと下を向いていたらしいんだ。そして次の日から学校に来なくなり、何日か経って転校したんだと……。」     
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