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私以外の家族は皆フランクな性格で友達も多い。
だからこんな私は突然変異と言われている。
世界を吹き渡る風のように、
人の心を揺り動かす人物になってほしい。
そんな想いから名付けられた風子である私は17年、誰の心も動かしてはいない。
さてここで話はそれる。
家に居ながら雷に打たれる確率はいかほどか?
詳しく調べたことはないが、
屋外においても、
確か飛行機事故と宝くじの中間辺り。
室内なら尚更確率は下がる。
つまり滅多にあることではない。
その確率に当たってしまったら、その先にあるのは重体か死かだ。
中には運良く軽傷ですむ人もいるが、
幾つかの好条件が揃わなければそうもならない。
あの強大な雷鳴が轟いた時、排水溝は、
最後の湯を猛スピードで飲み込んでいた。
すっかり見入っていた私は、
折り曲げていた体を伸ばし、湯冷めした肩を震わしていた。
頭にあるのは父が豆からひき、
淹れた珈琲のことだけと言いたいが、
ことの他強く思っていたのは友里亜のことだ。
春休みの殆どを彼女の一方的な電話やSNS、ショッピングに捧げた。
そして今日に至っては門限破りという出血サービスまで付いている。
ならばせめて明日違うクラスにならねば、我慢して捧げた時間は報われない。
どうか…
強く願い排水溝の方を振り返った。
そして私はその直後、
雷に打たれたかと記憶している。
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