アフターストーリー(その後)

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「高級品にしろという意味じゃない。あまりに安い物はすぐ駄目になることが多い」  そのへんについては以前洗濯物の物干しの時にも論争になったが、やはり八奈見は高価であってもいいものを長く使いたいタイプらしい。夏芽は安物を買って駄目になったらそのつど買い直したいタイプだ。このあたりもこれから一緒に生活するにおいてまた揉めるだろうか。  まあ、揉めない程度に妥協すればいいか。 「スーツも俺が見立ててやるから」 「それは助かります。けど…あの、お金が…」 「出世払いでいいと言ってるだろ」 「だけど最悪、就職できない可能性もありますし…」 「その時は俺が養う」  言われてしまった。それを。  女性なら喜ぶのだろうか。男の夏芽はやはりプライドが崩されてしまう。 「それは絶対に嫌です」 「じゃあ就活を頑張るしかないな」 「ですよね…」  結局尻を叩きたかっただけか。しかし実際死活問題だから就職は何とかしなくては。そう、いい腕時計にスーツを着たら身も引き締まるだろう。出世払いという名のローンを八奈見に返さなくてはならないのだから。 「どこを受けるかも決めてないんだろう?」 「はい。とりあえず公務員は日程が被らないなら一通り受けようかなと思って…」 「一通り?」
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