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「何がおっしゃりたいのでしょうか。はっきり言ってください」
八奈見が冷静に告げると、動揺しない様子を不満に思った中野は逆にたじろぐような様子を見せて、
「だから…あなたたちが怪しいって噂があるのよ。美形同士でお似合いなんですって」
などと言ってきた。
執務室内がざわざわとどよめくのがわかった。
何故だ。
まだ夏芽といるところでも目撃されて噂になるというならわかる。
でも、何故麻木と?
お似合いって何だ。男同士だ。女性職員ならまだしも。いや、女性と仕事で密にやりとりする機会が少ない職場なので今までその手の噂を立てられたことはほとんどない。
ああ麻木だからだ。彼が特別目立つせいだ。きっと八奈見がどうこうではなく、麻木と接触率が高いせいで注目されているだけだ。
「そういうことでしたか」
「否定しないの?」
「馬鹿馬鹿しくて否定するのを忘れていました。事実無根です」
「言い切るのね」
「これからは誤解されないように彼とは距離を置いて仕事をします。裁判に支障が出たら申し訳ありません」
仕事に悪影響を及ぼすかのような八奈見の言葉に、逆に中野が慌てた。
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